2017年5月23日火曜日

自分のレンズに意識的になること

この週末、人の特性を9つのタイプに分類して理解するエニアグラムのコーチ認定プログラムに参加しました。大学の授業で取り上げるエニアグラムについて理解を深めたかったことと、人材関連の仕事で必須である他者理解・支援のツールとして、しっかり学んでおきたかったのが受講理由。

エニアグラムが何かについて、ここでは省きますが、今回興味深かったのは、青少年から高齢者までの数千人を対象にした調査結果。それによると楽天性の高い個人は、、幸福感、自尊感情、レジリエンス、人生に対する満足度も高いというもの。これらの因果関係はもちろんわからないし、最近ではある程度の幸福度や性格は遺伝で決まっていて変えることが難しいという研究結果もあるため、それらを全体的に高めていくことの手立てを、この調査結果からはかり知ることはできません。

しかし、楽天性や人生に対する希望を高めることのヒントになりそうな調査結果がありました。それは、楽天性や人生に対する希望、幸福感、自己信頼が高い人は、マインドフルネスを構成する3つの要素のうち、自分について描写できる力を示す「描写」と、自分自身を客観視できる力を示す「観察」が高いというものです(残りの一つは「集中」)。

私達はそれぞれが異なるレンズをかけ、それを通して外界を捉え、それらに意味付けを行い、その結果に基づいて行動をしています(Kegan, 2009)。しかし、自分がどんなレンズをかけているか(言い換えればどのような価値観や信念(「こうあるべき」という考えを持っているか)を把握することは容易ではありません。日々の行動を振り返り、次の日からの行動を意識的に変えてみたり、自己の価値観や信念をくつがえされるような経験にあえて身を投じたり、過去の経験から自分が作り上げてきた物語を再構築することで、自分を悩ませていた可能性のある古いレンズの不具合が調整され、外界をより楽観視でき、希望を見出すことにつながり、自己信頼や幸福感も高められていくのでしょうか。

外界を捉える自分のレンズに意識的になることの効能は、想像を超える大きさなのかも。

写真は台北の街角にて。




2017年5月21日日曜日

「石垣組織」と「ブロック塀組織」

経済産業省による「2017年度技術力活用型・新興国市場開拓事業 国際化促進インターンシップ事業」の説明会に参加してきました。本事業そのものへの関心もありますが、一番の目的は(株)クオリティ・オヴ・ライフの原正紀さんにお会いすることでした。

原さんは今回「グローバル展開が組織を未来対応させる〜組織を強くする外国人活用〜」と題したワークショップをご担当されましたが、その中で最も心に残ったのは、多様な人々(異なる形や大きさの石)で構成された「石垣組織」が、同質性の高い「ブロック塀組織」に比べ、いかに強いかと言うお話でした。

外国人採用で期待することに、新たな価値の創造や、作業プロセスのイノベーション、グローバル化への対応等があるでしょう。しかし、成功事例として紹介されたある企業が経験した、外国人採用による効果は、もっと日常的なものでした。それは「日本人従業員がはっきり意見を述べることができるようになった」と言うもの。分からないことはたずね、自分の意見を持ち、はっきり相手に伝える外国人従業員の姿に、日本人社員が感化されたとのこと。

この企業では、外国人のそもそもの採用基準に「自分の意見を持っている。自立している。」などを掲げているそうです。だからこそそのような態度が仕事でも奨励され、個が活かされ、同僚の日本人の働き方にも良い波及効果をもたらしているのでしょう。

しかしこのような企業が存在する一方で、多くの外国人が日本企業での働きづらさを感じている現状があります。主な悩みは日本人従業員とのコミュニケーション不足。原さんによると、日本政府から特別な在留資格を与えられた高度人材の実に5分の1は、既に日本を去っているとのこと。残念なことです。

あたりまえのことですが、「人手不足だから」「海外展開だから」と周囲にしっかりと採用の意図を説明しなかったり、採用する外国人にも「なぜあなたが必要なのか」が伝えられていなければ、(石垣でいうところの)異なる形の「石」はうまく回りとフィットしないでしょう。そしてそもそも日本人従業員一人一人も異なる「石」であるはず。お互いを活かし合うために、お互いにより意識的になり、特に日本人は思いの言語化に積極的に努めなければならないと感じました。


写真は石垣の上にそびえたつ松山城

2017年5月12日金曜日

セルフディシプリン 〜成功と自己実現を手に入れるために〜

30年以上ぶりに再会した同級生男子。体育会系でどちらかといえばやんちゃな印象だった彼は、21歳で起業。今では余暇で海外旅行や自家用飛行機での遊覧を楽しむまでに成功。そして創業30年目の節目となる51歳には息子さんに会社を譲り、「新しいことを始めたい!」と、活き活きした表情で語ってくれました。そんな彼が欠かさないのは身体を動かすこと。泳ぎ、走り、トライアスロンにも参加する。それを聞いて、やっぱり自己実現していると見える個人に共通するのはセルフディシプリンなんだと、再認識しました。セルフディシプリンとは「自己鍛錬」や「自己修養」と訳すことができます。運動だけでなく、早寝早起きだったり、「足るを知る」ような、何事においても行き過ぎない生き方。そんな生き方に私自身も憧れます。

「経営者」となり、時間管理、経営判断、日々の雑務等あれこれを誰にも指図されずに自分で行わなければならない時、「やるべきことをやれているのだろうか?」、「もっと効果的な方法があるのではないか?」と迷いが生まれては消え、目の前のことにエネルギーを十分に注げないことが度々あります。セルフディシプリンを十分に身につけることができたら、自分のマインドをしっかり制御することができ、誰の基準でもない、自分にとっての成功や自己実現を手に入れることができると思うのです。ではどうすれば良いか。

スタンフォード大の心理学者マクゴニガルは、エクササイズが脳を鍛え、自己コントロールの生理機能を向上させると説明しています。また、瞑想の実践や、呼吸のペースを1分間に4回〜6回程度と、通常よりかなり遅くするだけでも脳は鍛えられ、自制心は高まり、不安、怒り、憂鬱、孤独感などを防ぐことにつながることが、複数の研究で明らかにされています。「自己鍛錬」「自己修養」と聞くと、汗水流す苦行のイメージですが、呼吸に意識的になることなら、誰でもすぐに始められそうです。

また少しそれますが、ポジティブ心理学の研究で知られるセリグマンは「健康資産」に含まれる可能性があるものとして、運動の他に楽観性、愛情、友情などを列挙していますが、それらと自己実現や成功との関係性はどのようなものなのでしょうか。今後正の相関関係が明らかになれば、社会的な成功や自己実現に必要なこととして、「ワークライフバランス」でいうところの「ライフ」がより重要視されるようになるのかもしれません。



2017年5月7日日曜日

「ソフトスキルは全然ソフトじゃない」。

「ソフトスキルって全然ソフトじゃないよね」。新たなプロジェクトの打ち合わせの中で、仲間から発せられた言葉。「ソフトスキル」という言葉に馴染みのない人にざっくり説明すると、あらゆるビジネスやプロジェクトにおいて求められる能力の中でも、コミュニケーション、リーダーシップ、ファシリテーション、ホスピタリティーなど、主に対人的な能力が「ソフトスキル」。一方ハードスキルは、デザイン、文章、ITなど目に見えて評価しやすいスキルになるでしょうか。冒頭の彼女、「ソフトスキルの実践にはすごい手間と時間がかかる。しっかりやろうとすると実はすごくハード」という意味でこの言葉を発していました。

一見ソフトスキルよりもハードスキルの方が獲得が困難に見えますし、ビジネスを進めていく上でもまず優先されるのはハードスキル。私自身、ソフトスキルは個々人の心がけやリーダーが説く精神論でなんとか表現されていくのでは・・・と軽視されているような気がしてなりません。しかし、チーム力の向上やメンバーの成長、そして経営効果に影響を及ぼすまでにソフトスキルを実践しようと思えば、そこにはソフトスキルについての十分な理解、緻密にデザインされた教育、チーム活動や職場環境デザインが必要であり、息を吸って吐くように行動できるようになるまでの1000本ノックのような実践の繰り返しが必要だと考えます。そして大事なのは、マニュアル化されたものを繰り返すような、本質を欠いたものになってはいけないということ。

NY初のハンバーガーレストラン「シェイクシャック」。荒廃した公園エリアの活性化の取り組みとして始まり、今や世界中に熱狂的なファンを増やしていますが、創業者ダニー・マイヤーの以下の言葉が印象的です。「サービスは“独り言”、ホスピタリティは“対話”なんです」。そういえば、日本の接客には誰に発せられているかわからないような「独り言」が多いように感じるのは私だけでしょうか。。。対話が生まれるホスピタリティーや、成果を生み出すスフトスキルの実践を可能にするために、冒頭の彼女とのプロジェクトは進んでいきます。

以下、シェイクシャックを取り上げたForbes Japanの記事(5月5日付け):
http://forbesjapan.com/articles/detail/16004/1/1/1